2021年11月末、西東京市の取組みで「サケの卵」をもらった小学2年生のあおいちゃん(左)。孵化をさせて2ヶ月間飼育し入間川へ放流するというミッションにチャレンジしました。4年生のお兄ちゃん、年少の妹ちゃんも応援してくれます。
「小学校から『サケの赤ちゃんを育ててみませんか』というふれあいセンターからのお知らせの用紙をもらい、生き物を飼うことをあまり経験したことがないので楽しそうだなと思い参加しました。」とあおいちゃん。「SDGs14番の『海の豊かさを守ろう』への第一歩にもなるしね!」とお兄ちゃん。命のこと、海のこと、環境のことは、“教科書で習った”だけではなく、“実際に体験する”という学びで、きっと自分ごとになっていくはずです。
「パッとみた感じはいつも食べているいくらだったけれど、良く見ると卵の中が透けてサケの赤ちゃんの目が見えたのでびっくり!『いつも私たちが食べているいくらと同じなのかなぁ?』と、不思議に思いました」と、あおいちゃん。卵をもらったこの日から大好きだったいくらが食べられなくなってしまったとか…。
自宅に持ち帰ったイクラちゃん。1昼夜さらしてカルキ抜きした水を水槽にいれ、イクラちゃんを移し入れます。「いっぱい大きくなってね!」
サケの赤ちゃんは電気の光や日光が大嫌いだそうなので、覗き窓を付けたダンボールの囲いを作りました!これで安心できるかな?孵化するまでは水の取り替えもしません。観察は1日に2回覗き窓からそーーーっとする程度に留めて静かに見守ります。
水槽に移して5日後の12月3日昼すぎ。あ!生まれてきました。不思議なことに卵から出てもいくらが付いています。これは「さいのう」という栄養袋で、お母さんからもらってきたお弁当のようなもの。暫くはこの栄養分だけで成長するためエサは不要だそうです。「卵をずーっとみていると、生まれる直前には少しだけオレンジの色が濃くなるので、だんだん生まれるタイミングがわかってきて楽しかったです!」と、あおいちゃん。
しかし次々と生まれる卵の中、残りの1個だけがなかなか生まれてきません。生きているのかわからなく不安だけが募ります。翌日12月4日夕方、ようやく孵化!!!「やっと生まれた時は他の子の孵化と比べ物にならないほど嬉しかったです!」と、あおいちゃん。これでもらってきた10個の卵全ての孵化に成功しました!
サケは孵化する際、ネバネバした泡のような特殊な液が一緒に出てくるので水が汚れます。そのため、卵が10個中9個孵化した段階で水を取り替えました。注意しなくては行けないのが水の量。沢山の水を入れ替えてしまうと水温が急変化してサケちゃんが風邪をひいてしまうのだそう。1回に取り替える水の量は容器の1/2以下。汚れが取りきれない場合は、翌日にまた1/2取り替えるようにします。
「水清くして魚住まず」の言葉通り、水は取り替え過ぎてもいけません。ごみなどはマメに網などですくい取り、それでも汚れたら取り替えます。「サケちゃんを間違えてすくってしまう事も多く、間違えて水道に流してしまわないよう気をつかって丁寧に作業しました」と、あおいちゃん。忙しい時でも手を抜かず、小さな命を大切に守っていたんですね。
サケちゃんを育てる最適温は10度。低すぎると成長が遅くなり、高すぎると放流した後に病気にかかりやすくなると言われています。温度管理をきちんとしていなかったあおいちゃん。孵化してから慌てて100均で水温計を購入し測ってみたらエアコンの影響か14度も!急いで涼しそうな玄関へ移動しました。
12月中旬。日に日に成長していくサケちゃん。10日前は生しらすのようだったカラダは透明から白っぽくなり、太さも出てきてしっかりしてきた印象。さいのうは細長く色も薄くなってきました。玄関を通るたびに水槽をのぞき「今日も元気に泳いでるな」「また大きくなったな」と、観察することが習慣になってきました。
1月初旬。孵化33日目。年末年始でさいのうがほぼ無くなりました。最後はポロリと取れるのかと思いましたが、体の一部になっていきました。不思議です!餌もよく食べるため排泄物も増え掃除が大変になってきました。サケは沈んだ餌を食べないので沈殿した餌は処理しないといけません。毎日網で汚れをすくって水を清潔に保ちます。
体が軽くなってきたのか、体力がついてきたのか、水槽の下を泳いでいた子達が一生懸命に上へ上へ。ずっと浮いているのが余裕な子も出てきました。川の中でもこんな懸命な努力が行われているのですね。「がんばれ!がんばれ!」
1月中旬。大きい子の顔つきが勇ましく鮭の顔つきになってきました。特に口あけて餌を食べる顔は怖い位です。しかし小さい子はまだまだしらす程度。餌をあげても大きい子ばかり食べてる気がして心配です。
2月に入って赤虫をあげました。すると「え!そんなに美味しいの⁉️」と、驚くほどの食いつき。もっと早くあげればよかったなぁ。あっという間にこんな大きなエサを食べられるようになるとは。大きくなったんだね。
2月中旬。放流の時期が近づいてきました。愛着が出てきましたがお別れの日も近い。大きく感じていた水槽が狭く見えてきました。
前日に雪が降り、放流が心配されましたが、積もる事もなく晴天。入間川も美しい!室内だとシルバーグレーに見えていた鮭ちゃんたち、太陽の光を浴びると透明感ある緑色でキラキラ輝いていました。川に溶け込む色だったんですね。
ふれあいセンターの人に、私たちのサケちゃんたちの大きさが『今回の最高記録だ!』と言われて大喜び。放流に来ていたほかの人たちも集まってきて、みんなに『すごく大きいね。』『元気だね。』『どうやって育てたの?』など声をかけてもらえました。
川辺から3人で水槽を傾けて放流しました。しかし水が重くてドバドバと水を流してしまったため、川の水が濁り、サケちゃんたちが泳いでいく姿を見失ってしまいました。あおいちゃん大ショック。でもきっと元気に泳いで行ったはずです‼️
とにかく不安でした。『ちゃんと大きくなってね。』と、何度もさけちゃんに声をかけてから放流しました。お兄ちゃんも「死んじゃったり、他の魚に食べられちゃったりしないかな…」と心配そう。妹ちゃんも「いなくなるの悲しいよぉ」と、半べそ。皆んなで大切に育てたからこそ、切ない気持ちが溢れたようです。
放流後に入間川沿いを散歩すると悲しい現実を目の当たりにしてしまいました。サケちゃん達が命を落としていたのです。距離的にあおいちゃんのサケちゃんでは無さそうですが「どうして…?なんで…?」と、全員絶句。自然は過酷だけど、せめてキレイな川・海を守ろうと強く思ったあおいちゃん。元気に海へ出て4年後遡上してね!!
今回数カ所あるふれあいセンターでは全部で1200個くらいの卵を用意したそうですが、この放流会で放流できたサケちゃんは900匹いかないくらいだったそうです。「少ない!と思ったけど、これでも、例年に比べると良い方だと聞いてびっくりしました」と、あおいちゃん。さらに今年は、温暖化の影響で太平洋や北海道でサケの卵が少なく、分けてもらえなかったそう。放流会の卵は新潟からなんとかいただいたものだそうです。こんなところにも温暖化の影響が出ているのですね。
最初はただ生き物を飼ってみたく、簡単そうだし…と参加しましたが、実際にやってみたら、毎日餌をあげたり、水槽のお掃除や水の入れ替えなど、魚を飼うのは大変でした。また、車で放流会に行く途中、コンビニでおにぎりを買ってもらったのですが、迷わず鮭を選んでしまいました。「サケちゃんとお別れでさみしいね」と話をしながら、鮭のおにぎり…みんなで笑ってしまいましたが、いつも食べている鮭が、元々はこんな風に小さな命が元気に育った結果なんだと改めて感じ、感謝して食べなくちゃいけないなと思いました。
また、魚にとって水温がすごく大事なことがわかりました。私たち人間は服や冷暖房で温度調節可能ですが、魚たちは、寒すぎても暑すぎても生きていく事がむずかしくなってしまう。温暖化やごみの影響で魚が少なくなっていることも知り、私たちでも今からできることがないか、家族で話し合ってみました。「使っていない電気は消す」「水を出しっぱなしにしない」「ごみは分別して捨てる!」いつも言われていることでしたが、地球に繋がっているとは考えていなかったので、これからはしっかり気をつけようと思います。
来年も放流会に参加したいと思いました。来年はもっと沢山のサケちゃんを今年以上に大きく元気に育てて放流し、地球のためになればいいなと思いました。また、稚魚になるまで育てて放流するということは、地球のためにどのくらい役に立っていることなのか気になり、インターネットで調べたのですが、放流は生態系を壊すとか必ずしも地球のためになっているとは限らないという話もあり、このあたりのことを、しっかり調べてみようとも思いました。
海や魚などにそこまで興味を持っているわけではなかったあおいちゃん。放流会という小さなきっかけで、自分が食べているおにぎりのこと、自分が住んでいる地球のことを、気にかけるようになったようです。色々なことにチャレンジしていって欲しいですね。海と日本プロジェクトでも美しい海を守るべくさまざまな活動を行なっていきます。皆様も是非共有していってください。活動情報はSNSでお知らせしています!
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