日本各地の「海に興味・関心がある子どもたち」と一緒に海のミライを考えるプロジェクト“海のキッズサポーター”。前回取材をした葛飾区在住の小学5年生かれんさんが、お茶の水女子大学による、海洋教育促進プログラム「全国一斉ウニの発生体験」で見事グランプリに輝きました!しかも中高生がメインで参加するイベントでの快挙なんです。
最初はうまくいくか不安でしたが、受精実験も変態誘導も成功し、毎日ウニのお世話を頑張ってきて良かったです。グランプリに選ばれてとても嬉しいです。学校でクラスのみんなに海のキッズサポーターとウニの発生研究について広められたのも良かったです。
1)お茶の水女子大学和田先生に送ってもらったウニの餌となる珪藻という植物プランクトンを育てました。
2)和田先生に送ってもらった精子と卵子を使って受精実験をしました。
3)幼生飼育で餌やりとお掃除をしました。
4)変態誘導といって幼生から稚ウニを誕生させました。
5)稚ウニの育成をしています。(研究報告は終わりましたが現在も稚ウニを育成中です!)
お母さんが「海と日本プロジェクト」のサイトでウニの発生研究のイベントを見つけて紹介してくれました。受精実験と言われてもよく分からなくて、でもわからないから実際にやってみたいと思いました。また、海の生き物を自分で育てることに興味があったのと、お母さんから聞いていた食物連鎖についても学べると思って挑戦することにしました。
現在(2022年2月)ウニの状態は変態誘導してから3ヶ月。一番大きなウニは5ミリにまで成長しました。少しずつですが大きくなっていくのが面白くて嬉しいです。今やっているお世話は、餌やりと海水の掃除です。餌は海藻食に移行できて、生あおさをあげています。和田先生とは、経過観察の報告と餌の生あおさや人工海水の素がなくなりそうになったら連絡をしています。分からないことや疑問に感じたこと、マニュアルにはないけど自分で考えてやってみたい事などを先生に相談するといつも丁寧に教えてくれました。
かれんさんグランプリおめでとうございます! このイベントでは、ウニ教材を用いて海を表現した作品を募集し、オンライン上で展示・相互投票してグランプリを決めました。レポート観察部門には高校生、中高の教員、一般の方などから全28作品の応募があり、その中で、かれんさんの作品が文句なしのグランプリに輝きました。スタッフ票は無く100%相互投票の結果ですので、他の参加者たちがこの作品を評価したということになります。私の目から見てもデータの質とまとめ方の両方において優れた作品でしたので、納得のグランプリ獲得でした。稚ウニ飼育も、いろいろ工夫しながら頑張って下さい!(写真:教材準備と詰め込み作業を行う和田先生)
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ウニの餌となる珪藻という植物プランクトンを自分で育てました。光合成のためにスタンドの光を当てながらエアポンプでエアレーションをして培養しました。温度も18〜22℃を保てるように気をつけました。温度が低いと育ちが遅くなるらしいです。最初は透明に近い色で少しずつ黄色っぽい色に変わっていって4日目で茶色になりました。
エアレーション開始からちょうど7日後にさらに珪藻を増やすために植え継ぎをしました。最初に育てた珪藻を基にして、海水に混ぜて、さらにスタンドで光を当てて、光合成をしながらエアレーションをします。この写真はチューブを増やして一気に2本分の餌を育てているところです。
秋のウニにはキタムラサキウニとアカウニがいて、私はキタムラサキウニの発生研究をしました。まず、シャーレに精子と卵子をスポイトで入れて受精の様子を顕微鏡で観察しました。受精には成功しましたが、受精膜が上がってくる様子は観察できませんでした。気をつけたことは精子と卵子を入れすぎないことです。密度が濃くなると発生実験が上手くいかなくなる、とお茶大の和田先生に教えてもらったからです。
卵の中で割れて2倍になっていく卵割について一通り観察できました。2個が4個になって4個が8個になって、8個が16個になりました。どんどん卵割が進んでいくので、何回も顕微鏡をのぞいて観察しました。
16細胞期の後で胞胚になります。その後の原腸胚はその後のプリズム幼生といまいち区別がつきませんでした。
プリズム幼生とプルテウス幼生は明らかに形が違うので、成長が進んでいることを確認できました。プルテウス幼生になったら、幼生をシャーレから3Lビーカーに移しました。プルテウス幼生になると、動きがものすごく速くなって泳ぎ回るから、顕微鏡で探すのがとても大変で、写真を撮るのに苦労しました。
受精から5日で腕が生えてきて、4腕幼生になりました。4腕が6腕になってその後、受精から8日間で8腕にまで成長しました。幼生の中の黄色いところは胃です。
幼生の中の黄色いところを見てください。黄色いところが半分茶色っぽいのが混ざっているところがあります。これがウニ原基というものです。受精から12日でウニ原基が胃と同じ大きさの8腕幼生に成長しました。ウニ原基が胃と同じ大きさになったら変態誘導ができるようになった証拠です。
受精から14日の2週間で3Lビーカーからタッパーに幼生を移動させました。タッパーは後でウニの水槽の代わりになるものなので、観察しやすいように、透明で見やすいものを選びました。変態誘導のために石灰藻のプレートを入れました。変態後の餌となるこの石灰藻があると、稚ウニへの変態が始まります。写真の左から右の形に少しずつ変化していきます。一番早くて変態誘導から3時間、多くは1日かけて変態していました。
オンライン相談会のときに、和田先生から「変態誘導をしないでも、稚ウニが誕生したことがあるらしい」と聞いたので、気になってやってみました。途中まで変態していたのですが、残念ながら途中で死んでしまいました。
左側の写真が使用したタッパーです。600mlの大きさだったので海水の量を全て半分の300ml準備して、幼生の数を、少なめ・普通・多めの3つにして密度を変えてみました。また、3Lビーカーで羽根つきのモーターで回転させながら飼育していた幼生と、3Lビーカーに入れただけの静置飼育の幼生といたので、それぞれに密度を変えてタッパーに移動させました。用意したタッパーすべて順調に成長しているので、大きな違いは見つかりませんでした。右の写真を見てください。真ん中の濃い赤いところが「ウニの口」です。ここから餌を食べます。
稚ウニ発生から2日で顕微鏡の一番小さい倍率50倍では観察できないぐらいの大きさに成長しました。大きくなった稚ウニはルーペで観察しています。一番大きな稚ウニで変態してから25日で約3ミリの大きさまで成長しました。ちなみに現在(2022年2月)の大きさは5ミリです。11月11日に変態したので約3ヶ月です。
変態後も、赤いプレートの石灰藻と合わせて21日間は2日に1回自分で育てた珪藻の餌やりもしました。変態後25日で1つのタッパーに自分で用意した昆布を入れてみました。昆布は、海水が汚れるのが早いので、水換えが多くなり大変です。また、なかなか食べてくれなかったのですが、石灰藻が少なくなってきて、やっと食べてくれるようになりました。生あおさは和田先生から送ってもらった海藻です。稚ウニに変態後27日で違うタッパーに食べやすいように小さくハサミでカットした生あおさをあげました。生あおさは海水を汚すことがないので、手入れがとっても簡単です。どちらかという生あおさの方が食いつきがいいように感じますが、石灰藻の方が好きみたいでした。(写真右の赤いプレートが変態誘導に使った石灰藻プレートです)
この観察レポートを提出したときには、海藻食への移行を頑張っていましたが、現在は全て海藻食の生あおさへの移行が完了しました。また、他の餌でも試してみたかったのですが、思いついたキャベツや海苔は昆布のようにタッパーを汚しそうなのと、稚ウニが生あおさをよく食べてくれるので今回は実験するのをやめました。
顕微鏡のピントを設定するとき、プランクトン計数板の真ん中にある縦横の線を目印にすると卵を探しやすいことに気づきました。 受精卵とプリズム幼生の間はとてもわかりやすいです。一方で、プルテウス幼生になって自由に動き回るようになってからは死んでしまった卵や幼生の死骸にピントを合わせてから周りを探すと見つけやすかったです。
プランクトン計数板を置く場所は暗いところがいいことがわかりました。初め白いところに計数板を置いていたため何も見えず困ったのですが、色が関係しているのかもと思い、折り紙で試してみました。黒は一番観察に向いていて、白が一番向かないことがわかりました。私は観察には見やすい黒を使いましたが、幼生が海を泳いでいるみたいに綺麗なので青が好きです。
最後に本物の海水でも実験してみました。趣味のサーフィンで九十九里に行った際、海水を持ちかえり、コーヒーフィルターでろ過させて幼生を入れました。3日間かけて4腕幼生から8腕幼生まで成長できたことを確認しましたが、その後すべて消えてしまいました。原因不明ですが、恐らく、ろ過が不十分で他の生物に食べられてしまったのではないかと思います。 次の研究の時には、ろ過をしっかりやって、本物の海でも成長させられるように頑張りたいです。
2/16からバフンウニの発生研究にも参加しています。キタムラサキウニとの比較が楽しみです。この研究では、妹のまりあ(小2)の先生もやります。難しいかもしれないですが、妹にも分かるように教えていきたいです。そして、バフンウニの研究も成功できたらお父さんに水槽を買ってもらって、ヒトデやヤドカリ、イソギンチャクなど、海の磯にいる生き物と一緒に育てて自分の海を作ってみたいです。(写真:2/22のキタムラサキウニ。最大で7mm弱ぐらいにまで成長しました!)
受賞の話を小学校の担任の先生にしたところ、学校でも表彰授与を行ってくれることになり、表彰状を学校に持って行きました。コロナで放送朝礼だったのですが、職員室に行き、校長先生に表彰してもらいました。それから、担任の先生がクラスのみんなに私の海の活動を詳しく伝えてくれ、1人1台配布されているタブレットを使って、みんなが海のキッズサポーターの取材記事と、ウニのグランプリの受賞記事を調べてくれました。
また、クラスの廊下には観察レポートを貼ってくれました。他クラスの先生からも「すごいね!」「見たよ!自分で誕生させたの?」「今度研究のことを聞かせて」と、声をかけてもらえて、とっても嬉しかったです。
海と日本プロジェクトのさまざまなイベントに参加しながら、海への理解を深めていく「海のキッズサポーター」。井田かれんさんは、海への探究心をとても大切にしていました。このイベントは中学生や高校生がメインで参加するイベントですが、積極的に取り組みグランプリを獲得。そして止まることなく次の目標に邁進しています。自分だけでなく、妹さんや学校のお友達、先生など沢山の人たちの心も動かすかれんさんの行動力は、これからも注目していきたいです!
海と日本プロジェクトでも美しい海を守るべくさまざまな活動を行なっていきます。海のキッズサポーターの皆さんとも力を合わせて色々な取り組みをしていきたいと思いますので、皆様も是非共有していってください。活動情報はSNSでお知らせしています!
お茶の水女子大学による、海洋教育促進プログラムです。全国各地にウニの受精実験教材を一斉発送し、利用者同士をオンラインで繋いで一体感を持ちながら海を学んでもらおうというイベントで、夏、秋、冬、とそれぞれの時期に繁殖期を迎えるウニを用いて、年3回の開催予定です。
もともとは学校での授業用の教材なのですが、ご家庭などでも一緒に発生体験をしてもらおうと2021年度から一般枠を設けました。ウニの発生実験を通して、多くの人に、海についてより身近により深く知ってもらいたいと考えています。
また、表現作品コンテストに参加することで、「海を学ぶ」から「海を表現する」アクションへと繋げてもらうことも期待しています。
今後のイベントにつきましては、詳細が決定しましたらこちらのサイトでご案内いたします。
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東京都葛飾区
小学5年生
海と繋がっていると感じられて、海に愛されていると感じることができるところが、サーフィンの1番の魅力だという小学5年生のサーフガール。ビーチクリーン、タウンクリーンは勿論、海の安全、海の環境問題、海の生態などへの学びに対しても積極的です。将来の夢は海を守るプロサーファー。