かわいらしい学者さんが発表しているのは、CO2を吸収する海の植物「ブルーカーボン」について。難しい話もこうやってイラストと一緒だとすごくわかりやすくなりますよね。これは、インフォグラフィックといって、文字だけでは伝わりにくい情報をイラストや地図などを使ってわかりやすく表現したもの。
このインフォグラフィックを使って海の魅力や問題を発表した大会が2022年8月に行われました。素敵な絵を書いてくれたのは御茶の水美術専門学校のお兄さんお姉さん。そして内容を考えたのは、なんと小学生!大好きな生き物のことや取り組んでいる環境保護活動などを発表してくれました。今回はこのキッズがこの大会を経験することでどんな成長を遂げたのか。その後の活動を追いかけました。
力作揃いのインフォグラフィック。コンテストにノミネートされた20作品の中から、注目度の高かったこちらの作品をピックアップ。
まずはサンシャイン水族館賞を受賞した小学6年生鈴木瑛梨花さんと三木詩音さんの作品「沈没をあきらめない」です。地球温暖化の影響で起こるとされる海面上昇についての真剣な発表が評価されました。賞状と共に送られたのが作品の商品化!
さて一体どんな商品になるのでしょうか?原料は…使い終わった紙くず。それを大きな機械にかけて出来たのはリサイクルペーパー!
そしてこの紙に海面上昇についてのインフォグラフィックを印刷し、細長く丸められた紙を小さく切って…。
作品が描かれた包装紙に綺麗に包まれて出来上がったのは、インフォグラフィックが印刷されたトイレットペーパーでした!
このトイレットペーパーが販売され始めたと聞き、インフォグラフィック作品を作った瑛梨花さんと三木さんがサンシャイン水族館を訪れました。
出迎えてくれたのは、コンテストで審査員を務めた副館長の長塚さん。「このデザインは、ぱっと見たときに、足元をすくわれるようなドキッとする感じがしました。とてもメッセージ性が高いと思って、サンシャイン水族館賞としてこの作品を選ばせていただいたんです。」と長塚さん。「トイレは誰でも行きます。1日何回も目に触れてもらえるということで、トイレットペーパーにしたんです。」と、長塚さん。この作品を何度も見て環境のことを考えてほしいという思いだったんですね。
自分たちの作品の商品化。はじめて手にとると思わず「おーーー!」っと嬉しい声が溢れます。「順番で読んでいけば、沈没をどのように対策すれば良いか分かるようにようにデザインをしてみました。」と、トイレットペーパーへのデザインアイディアを考えた三木さん。
「トイレは壁に貼ってるものでも読む時間があるので、トイレットペーパーにインフォグラフィックを入れることで、少しでもこの海面上昇への問題意識を持っていただけたらなと思います。」と三木さん。「ここで知った情報を更に伝えていってもらえると嬉しいです。」と瑛梨花さん。家族みんなで使うものだから、海面上昇について話すきっかけにもなるっていうことですね。
「このトイレットペーパーは館内にも使われていまして、水族館をご利用される方にも、思いが伝わってると思います。水族館職員も生き物や自然界のことを皆さんに伝えているのですが、なかなかデザインにまで気を配れないんです。このデザインは、いかに伝わるかを考えていて、小学生すごいな!デザインの学生さんすごいな!と思いました。」と長塚さん。
未来の海についてみんなに知ってほしい、考えてほしいという思いが詰まったトイレットペーパー。素敵なアウトプットです。
続いては、小学5年生の濱田蓮音さんと宮下奈々さんの作品。干潟の誤解〜埋め立てないで大切な干潟〜。コンテストにはリモート出演の蓮音さんでしたが、海の環境をゴカイという生き物を通して表現するとてもユニークな発表で特別賞に輝きました。
そんな蓮音さんの日常を見せてもらうため、お住まいのある鹿児島へ。この日行われたのは桜島の磯で行われていた、海のフィールドワーク。蓮音さんの大好きな海洋生物についての授業です。
早速見つけたのはカメノテ。亀の手にそっくりな形をしていますが、エビやカニと同じ甲殻類、日本全国の岩場に生息しています。インフォグラフィックの題材になったゴカイもいました。扇のような形の甲羅をしているオウギガニも発見。
蓮音さんはカニの目の形に疑問を持ちました。「カニの絵を書いてと言うと、大抵目を飛び出させるけれど、イワガニの仲間は飛び出ない。岩の隙間に隠れられるから、目をギョロっと外に出さなくていいわけ。」と、NPO法人くすの木自然館の浜本麦さん。インフォグラフィックの題材だったゴカイや干潟について教えてくれた蓮音さんの師匠です。
「海って、干潟だけじゃない。磯があって、藻場があって、サンゴがあって、それぞれ全然違う環境が残ってるので、それぞれを1回体感してもらえると、海の多様性を知り、全部守らないと駄目だ、むしろ全部守ったら楽しいなと、思えるはずです。今回は干潟ではなく磯にきました。次はサンゴか藻場かな〜?プランクトンも楽しいな〜。全部やると四、五年かかるねっていうのは話してますが、その全部を一緒にやっていけたらいいなと思います。」と、浜本さん。
蓮音さんみたいなキッズが未来の海を支えていく存在になるんですね。「今まで僕が知らなかった生き物が見られてとても嬉しいです。」と、蓮音さん。師匠と力を合わせて海のことをどんどん学んでいってくださいね。
さて、コンテストにノミネートされたインフォグラフィック作品は、「これを見て海のことを多くの人に知ってもらいたい!」と、いう目的で、大勢の観光客が利用する2ヶ所に展示をさせてもらいました。まずは海の真ん中、東京湾に浮かぶパーキングエリア「海ほたる」。たくさんの人が利用する休憩スペースに20作品全てが展示されました。楽しんで見る人、真剣に見る人、みんな海のことについてたくさん学んでくれました。
「海ごみの問題があることは知ってたんですけど、対策もこんな風にされていのだなぁ、と知りました」と、展示を見ていた女の子。「ブルーカーボン、マングローブ、干潟などエコ検定にも出てくる言葉が書かれてて凄いねぇ!」と、男性も驚いていました。
もう1ヶ所は、羽田空港第2ターミナル。こちらでも大勢の人が足を止めて作品を見てくれました。
「しんかい6500の生き物にビックリした!こんな生き物がいるなんて知らなかった!」と男の子。「普段気にもしてないことでしたが、読むことで知れてよかったです。」と、立ち止まって読んでくれていた女性。
やっぱりインフォグラフィックの伝わりやすさは抜群。これならたくさんの人が海のことに興味を持ってくれたこと間違いなしです。
次のアウトプットは、スーパーマーケットのイトーヨーカドーから贈られた賞を受賞した小学3年生の山下櫂生さん。作品が商品化されたと聞きお父様と一緒にお店を訪れました。
売り場を見つけると「すご!すごい!すごい!」と、大喜び。手に取った商品パッケージにはインフォグラフィックのステッカーが貼られています!
櫂生さんと佐藤弘美さんの作品名は、地球にやさしいプラスチック。プラスチック博士になりたいという櫂生さんの熱心な研究成果をより強く印象付けたのがこのキャラクター。自然由来の原料をわかりやすく表現しています。「我々も地球にやさしいプラスチックがあることをお客様に伝えて、選んでもらいたいと思いました。」と、この作品に感動したイトーヨーカドーの小山マネージャー。
インフォグラフィックのステッカーが貼られているのは、商品のパッケージに、環境にやさしいプラスチックを使用している目印。多くの人に知ってもらいたいという思いから生まれたエコなコラボグッズなんです。
「テーマを通してこの商品ができてすごく嬉しいです。」と、櫂生さん。「お店に商品が並んで、達成感や、やって良かったという気持ちが芽生えてると思います。これからも海に関する取り組みを一緒に学んでいきたいです。」と、お父様。イトーヨーカドーの商品パッケージ全部にこのステッカーが貼られている未来が来たら最高ですね!
最後のアウトプット紹介は、最優秀賞の小学2年生の瀬之上綾音さんと中島彩夏さんの作品。CO2の新たな吸収源・ブルーカーボンで世界をリードせよ!。大人顔負けの探究心とプレゼン力で会場を沸かせました。
そんな綾音さんが2022年12月、横須賀市で行われたブルーカーボンのイベントにゲスト出演。ここでも立派なプレゼンを披露し、堂々とした発表に客席から大きな拍手が湧き起こりました。
「実は今まで国土交通省が作っているパンフレットを使って説明してきました。ただ綾音さんのインフォグラフィックポスターをツイッターで見て“これはすごい”と思い、すぐ海と日本プロジェクトさんに連絡し、是非一般向けの講演に使わせてくださいと、お願いをしたんです。」と、専門家の方。専門家が驚くほどのインフォグラフィックを作った綾音さん!本当にすごいですね。
今回のイベントでは、船に乗ってブルーカーボンの現場を見学することができました。沖に出て、ブルーカーボンがある場所とそうでない場所のCO2の濃度を実際に計測します。
実験の舞台は横須賀港。船が出発した港では水中のCO2濃度は417ppmでした。沖合に浮かぶ猿島の周りではワカメが養殖されているので、この2ヶ所を調べれば海藻によってどれくらいCO2が吸収されているかが分かるらしいのです。そして数値の違いが出ました!確かにブルーカーボンはCO2削減の新たな切り札となりそうです。
綾音さんも初めて目にする実験に興味津々。「知らないことも沢山あって勉強になりました。これからもブルーカーボンのことを沢山知ってみんなに知ってもらう活動がしたいです。」と、綾音さん。
美しい海を未来に残していくためには、1人でも多くの人に海の魅力や危機を伝えていかなくてはなりません。その大きな力となるのが未来を担う子供たちが作る海洋インフォグラフィックなんです。
大好きな海のことを一生懸命学ぶ子供たち。2023年のコンテストではどんな作品に出会えるのでしょうか?お楽しみに!
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次回のみんなのあおいろは・・・
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